「買った方が安い」は、半分あたっています
家庭菜園をはじめようとすると、まわりから「野菜なんてスーパーで買った方が安いよ」と言われることがあります。これは半分あたっています。プランターと土と苗を買い、採れた野菜をお店の値段に置きかえて足し引きすると、1年目は赤字になることも珍しくありません。
でも、家庭菜園を「食費を減らす手段」ではなく「趣味」として見ると、話は変わります。多くの趣味は、お金を払って楽しんだら、それで終わりです。家庭菜園は、使ったお金に対して、食べられる成果物と、体と気持ちへのメリットが必ず返ってきます。かかるお金をごまかさずに見たうえで、それでも家庭菜園をおすすめしたい理由をお話しします。
家庭菜園に、実際いくらかかるか
1年目: 数千円で「1株」がはじめられる
プランターで野菜を1株育てるのに必要なものは、深型のプランター、野菜用の培養土、苗(または種)、肥料、じょうろの5つです。ホームセンターや100円ショップをうまく使えば、じょうろまで含めても数千円台で一式そろいます。ゴルフのクラブや釣り道具、カメラのように「はじめるのに数万円」という趣味と比べると、入口のハードルはかなり低めです。
2年目以降: 苗と肥料の代金だけ
プランターとじょうろは何年も使えます。土も、手を加えれば再利用できるので、2年目からの出費は苗代と肥料代がほとんどです。苗は1つ数百円。毎シーズン数株ずつ育てても、年間の出費は多くの趣味の月謝1か月分にも届きません。
ほかの趣味と比べると
余暇の過ごし方を毎年調べている「レジャー白書」によると、園芸・庭いじりに使うお金は年間1万円台です。旅行やゴルフのように年間十万円を超える趣味と比べると、ひと桁少ない水準です。しかもこの金額には花や庭木も含まれているので、プランターで野菜を数株育てるだけなら、さらに少なくてすみます。
- プランター(深型・スリット入り)何年も使える
- 野菜用培養土手を加えれば再利用できる
- 苗・種毎シーズン数百円
- 肥料1袋で何シーズンも使える
- じょうろ・手袋・移植ごて一度買えばずっと使える
それでも「買った方が安い」と言われたら
元が取りやすい野菜と、取りにくい野菜がある
キャベツやハクサイ、タマネギのように「お店で安く、育つのに時間がかかる」野菜は、プランターで育てても元は取りにくいです。こうした野菜は「元を取る」ことは忘れて、育つ様子を楽しむために育てると割り切ったほうが気が楽です。
一方で、ミニトマト、シソ、バジル、コマツナ、ラディッシュのように「少しずつ何度も収穫できる」野菜は事情がちがいます。ミニトマトは1株からひと夏で数十個から100個ほど採れることも珍しくありませんし、シソやバジルは葉を摘むほど新しい葉が出てくるので、夏じゅう薬味やハーブを買わずにすみます。天候不順で野菜の値段が上がる年ほど、この差は大きく感じられます。
「消費する趣味」と「返ってくる趣味」
それでも、材料費と収穫量だけで比べれば、買った方が安いことはあります。ただ、映画やゲーム、カフェ、推し活といった趣味に「元が取れるの?」と聞く人はいません。趣味は、お金を使って楽しむものだからです。その目で見ると、家庭菜園は次のものが必ず手元に返ってくる、めずらしい趣味です。
- 食べられる成果物採れたての味はお店では買えない
- 必要な分だけ摘める使い切れずに捨てる野菜がなくなる
- 体を動かす習慣毎朝の水やりと週末の土いじり
- 気持ちの切り替え画面から離れて土と植物に触れる時間
- 季節を知る感覚「もう種まきの時期か」がわかるようになる
- 家族との会話こどもや孫と一緒に収穫できる
土に触れると気持ちが落ち着く、というのは気のせいではありません。庭いじりと健康の関係を調べた海外の研究でも、庭いじりをする人はうつや不安が少なく、暮らしへの満足度が高い傾向が報告されています。朝の数分、植物の様子を見る時間は、思っている以上に自分のためになっています。
かかる時間は「朝の数分」と「週末の1時間」
お金と同じくらい気になるのが時間です。プランター栽培の毎日の作業は、朝に土の表面を見て、乾いていたら水をやるだけです。株が数個なら数分で終わります。週末に30分から1時間ほど、わき芽を取ったり、肥料を足したり、支柱を直したりする「土いじりの時間」をとれば、平日はほとんど手がかかりません。
真夏は朝夕2回の水やりが必要になることもありますが、それでも1回は数分です。「毎日まとまった時間が必要」な趣味ではなく、「毎日ちょっとだけ触れる」趣味なので、仕事や育児で忙しい人ほど続けやすいです。
続けるうえでいちばんの壁は、時間そのものより「いつ何をすればいいかわからない」ことです。追肥の時期を忘れて実つきが悪くなる、種まきの適期を過ぎてしまう、といった失敗は、知識よりも「そろそろだよ」という声かけがあれば防げます。園芸鳥 耕太郎は、この「いつ・何を」を朝の通知で知らせてくれるアプリです。
年代別: 家庭菜園の楽しみ方はこう違う
同じ「家庭菜園」でも、年代によって楽しみ方や動機はかなり違います。種苗会社の調査でも、若い世代は「おしゃれ」「癒し」、子育て世代は「安心・安全」「こどもの教育」、50代以上は「趣味として楽しみたい」が上位にくるそうです。ご自分に近いところから読んでみてください。
20〜30代: コスパもタイパも悪くない趣味として
この世代にとっての家庭菜園は、「ベランダ菜園」や「窓際のハーブ」です。節約というより、部屋に緑がほしい、サブスクのように毎月お金が出ていく趣味に疲れた、画面から離れる時間がほしい、といった理由ではじめる人が多いようです。
おすすめは、ミニトマト1株かバジル1鉢からはじめること。初期費用は数千円、毎日の手間は数分で、ひと夏でサラダやパスタに使える量が採れます。「1株でここまで返ってくる」を一度体験すると、コスパもタイパも悪くない趣味だとわかります。写真に残る成長の記録も、楽しみのひとつです。
40〜50代: 家族の食卓と、自分のリセット時間として
子育てや仕事が忙しいこの世代では、「安心して食べさせられる野菜を自分で育てたい」「こどもに野菜が育つところを見せたい」という食育の気持ちと、「週末に1時間だけ土をいじって頭を空にしたい」という自分のための時間がうまく重なります。
おすすめは、こどもと一緒に収穫を楽しめるミニトマト・イチゴ・ラディッシュ。ラディッシュは種まきから1か月前後で採れるので、飽きる前に結果が出ます。「自分で採った野菜なら食べる」というこどもは多く、食費以上の見返りを感じやすい世代です。
60代以上: 体を動かす、季節を感じる、分け合う楽しみとして
この世代では「土いじり」「畑」という言葉のほうがしっくりくるかもしれません。毎朝の水やりが起きる理由になり、季節ごとの作業が暮らしの目印になります。採れすぎた野菜をご近所やお孫さんに分けるのも、大きな楽しみです。
おすすめは、深型のプランターで育てるナスやピーマン、秋冬のコマツナやダイコンなど、長く収穫が続く野菜。腰への負担が気になるときは、プランターを台やスタンドに乗せて、立ったまま作業できる高さにすると続けやすくなります。市民農園やシェア畑に一歩踏み出す前の練習としても、プランター栽培はちょうどいい入口です。
使ったお金は、それ以上になって返ってくる
家庭菜園は「タダの趣味」ではありません。プランターと土と苗に、最初に数千円かかります。でも、その数千円は消えずに残ります。プランターは翌年も使え、土は再利用でき、苗は毎年数百円です。そこから返ってくるのは、採れたての野菜と、毎朝数分の習慣と、週末1時間の気持ちの切り替えです。
使ったお金がゼロになる趣味と、使ったお金が形になって戻ってくる趣味。同じ「お金のかからない趣味」でも、中身はかなり違います。まずは1株から。それがいちばんお金のかからない、そしていちばん見返りの大きいはじめ方です。
お金をかけずにはじめる手順
- 育てる野菜を1つ決める。はじめてなら、ミニトマト・バジル・シソ・コマツナ・ラディッシュのどれかが失敗しにくく、少しずつ何度も収穫できます。
- 深型でスリット入りの角型プランターを1つ買う。鉢底石はいらないので、プランターと野菜用培養土だけで準備が整います。選び方は「プランターの選び方」の記事にまとめています。
- 苗を1株買って植える。種から育てるより失敗が少なく、収穫までの時間も短いです。植える時期は品種ガイドで確認してください。
- 毎朝、土の表面を見て、乾いていたら水をやる。これだけを習慣にします。
- 週末に30分から1時間、わき芽取りや肥料など、その時期の作業をする。肥料の量はパッケージ表示にあわせてください。
お金の面でよくある失敗
- 最初から道具をそろえすぎてしまった。1株なら、プランター・培養土・苗・肥料・じょうろで十分です。足りないものは、必要になってから買い足しましょう。
- いろいろな苗を何株も一度に買ってしまった。手が回らず枯らしてしまうと、いちばん高い買い物になります。まずは1株から。
- 土を毎シーズン買い替えてしまった。使い終わった土は、手を加えれば再利用できます。
- 「元を取ろう」と意識しすぎてしまった。収穫量で赤字に見えても、返ってくるのは野菜だけではありません。趣味として楽しむ気持ちで続けたほうが、結果的に長く続いて収穫も増えます。
- 追肥や種まきの時期を忘れて、収穫が少なくなってしまった。時期の管理は通知にまかせると、失敗がぐっと減ります。
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プランターの選び方は丸型より「四角+スリット入り」がおすすめな理由に、育てる品種の選び方は品種ガイドにまとめています。今月はじめられる野菜は今月のはじめどきから確認できます。
費用や野菜の値段は、お住まいの地域・時期・お店によって変わります。この記事の金額は一般的な目安です。